業務改善

「なんとなく忙しい」を数値化する:プロセスマイニングで見つける隠れた非効率の正体

Anomaly編集部

「毎日残業しているのに、なぜか仕事が片付かない」――そんな感覚を抱える現場は、日本の中小企業に数多く存在します。問題は「忙しさの正体」が見えていないことです。勘と経験(KKD)に頼った業務改善には限界があります。2025年後半から中堅・中小企業でも注目が高まるプロセスマイニングを活用すれば、「なんとなく非効率」を数値として可視化し、データドリブンな業務改善への第一歩を踏み出せます。


第1節:「忙しいのに成果が出ない」の正体――KKDに頼る業務改善の限界

多くの企業では、業務改善の議論が始まると「あの工程が長い気がする」「あの担当者のところで止まっている印象がある」という感覚ベースの発言が飛び交います。これがいわゆるKKD(勘・経験・度胸)による業務改善です。

KKD型改善が抱える3つの限界

① 問題の所在がズレやすい:声の大きい部門・担当者の課題が優先され、本当のボトルネックが見過ごされる。

② 改善効果が測れない:Before/Afterを数値で比較できないため、改善が本当に機能したか判断できない。

③ 属人化が進む:「あの人がいないと回らない」業務が温存され、離職リスクや引き継ぎコストが増大する。

本当に無駄なのはどの工程か?
承認フローのどこで何日止まっているのか?
その答えは、担当者の「感覚」ではなくシステムの「ログ」の中にあります。

第2節:プロセスマイニングとは何か――ログデータから業務の流れを「見える化」する仕組み

プロセスマイニングとは、ERPや基幹システム・グループウェアなどに蓄積されたイベントログ(操作履歴データ)を分析し、実際の業務フローを自動的に地図として描き出す技術です。「あるべき業務フロー」ではなく、「実際に起きている業務フロー」をデータで再現できる点が最大の特徴です。

プロセスマイニングが可視化するのは「理想の業務フロー」ではなく、「現実に起きている業務フロー」です。どの工程に何時間かかっているか、どこで手戻りが発生しているかを、ログデータが正直に教えてくれます。

主なツールと特徴

Celonis(セロニス)

世界シェアトップクラスのプロセスマイニングツール。SAPやSalesforceとの連携が強く、大手企業での導入実績が豊富。2025年以降、国内中堅企業向けプランも拡充中。

UiPath Process Mining

RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)大手のUiPathが提供。「可視化→自動化」を一気通貫で実現できるため、すでにRPAを導入済みの企業との親和性が高い。

分析の流れはシンプルです。1既存システムからログデータを抽出し、2ツールに取り込んでフローを自動生成、3ボトルネック・逸脱・待機時間を数値で特定する――この3ステップで「隠れた非効率」の正体が明らかになります。


第3節:実際の活用シーン――受発注・経費精算・承認フローの無駄を数値で発見する

「プロセスマイニングは大企業のもの」というイメージは過去のものです。以下のような業務シーンでは、中小企業でも実際の改善効果が出ています。

1
受発注処理の滞留検出

ある製造業(従業員80名)では、受注データのログを分析した結果、受注入力から出荷指示までの平均リードタイムが3.2日であるのに対し、特定の担当者経由の案件のみ平均6.8日かかっていることが判明。属人的なExcel管理が原因で、システム入力が後回しになっていたことが数値で証明されました。

2
経費精算フローの手戻り可視化

経費精算システムのログを分析すると、申請の約34%が差し戻しを経験していることが判明。差し戻し理由の上位3件を特定し、申請画面に入力ガイドを追加するだけで、翌月の差し戻し率が12%まで低下した事例があります。

3
稟議・承認フローの待機時間の特定

ワークフローシステムのログを分析した結果、承認フローの平均待機時間4.1日のうち、約2.7日が特定の役職者の承認待ちであることが判明。承認権限の委譲と代理承認ルールの設定により、フロー全体を約40%短縮できました。


第4節:中小企業でも始められる低コスト導入の選択肢と成功のための3か条

プロセスマイニングは「億単位のITプロジェクト」ではありません。クラウド型のSaaSプランであれば、月額数万円〜十数万円の範囲から試験導入が可能です。また、既存のExcelログやCSVデータからでも簡易的な分析を始められる軽量ツールも登場しています。

2025年後半以降、RPAや生成AIとプロセスマイニングを組み合わせた「可視化→自動化→継続改善」の一気通貫モデルが中堅・中小企業の業務効率化の標準アプローチになりつつあります。まず「見える化」から始めることが、DX推進の最短ルートです。

成功のための3か条

① スコープを絞って始める

最初から全社展開を目指さず、「経費精算だけ」「受注処理だけ」と対象業務を絞ることで、データ収集・分析の負担を最小化できます。小さな成功体験を積み上げることが継続の鍵です。

② ログデータの品質を事前に確認する

プロセスマイニングの精度は、ログデータの品質に直結します。「いつ・誰が・何をしたか」が記録されているシステムかどうかを事前に確認し、必要であればログ出力設定の見直しから始めましょう。

③ 分析結果を現場と一緒に読み解く

データが示す「非効率」を経営者やIT担当者だけで判断せず、現場担当者と一緒に「なぜそうなっているのか」を掘り下げることが重要です。データは問いを立てる道具であり、答えは現場の中にあります。


まとめ

  • 「なんとなく忙しい」の正体は、KKDに頼った改善では見えない。プロセスマイニングでログデータから業務フローを可視化することが突破口になる。
  • 受発注・経費精算・承認フローなど、日常業務のログを分析するだけで具体的な数値と改善ポイントが浮かび上がる。
  • クラウド型ツールの普及により、中小企業でも低コストからの試験導入が現実的な選択肢となっている。
  • 成功のカギは「スコープを絞る・データ品質を確認する・現場と一緒に読み解く」の3か条を守ること。
  • プロセスマイニングはRPA・生成AIと組み合わせることで、業務効率化をデータドリブンに継続改善する基盤となる。
一覧に戻る

製造業のDXでお悩みですか?

Anomalyでは、製造業に特化した業務アプリケーション開発を行っています。まずはお気軽にご相談ください。